ファストファッションのファッションウィーク参加はアリ?
ファッションウィークとのベストな関係性とは
〈Topshop(トップショップ)〉、〈H&M(エイチ・アンド・エム)〉、〈Zara(ザラ)〉、〈COS(コス)〉に共通するものは? 街やショッピングモールでおなじみという点はさておき、今季のファッションウィーク開幕に向けて最大級のショーやプレゼンテーションを仕掛けたのも彼らだった。
2025年8月、〈Topshop〉はロンドンの『トラファルガー・スクエア』を封鎖するキャットウォークショーでランウェイに復帰し、自社サイトと単独コレクションを再ローンチした。ニューヨーク・ファッションウィークでは、〈COS〉がサンディ・リアン(Sandy Liang)やジェーン・ウェイド(Jane Wade)と同じ日にショーケースを開催。
ほどなくして、ロンドン・ファッションウィークで〈H&M〉はショーケースとアフターパーティで新コレクションを披露し、超過密なファッションウィーク日程の口火を切った。同ブランドはこのイベントを「ランウェイとコンサート、そして“リビング・マガジン(生きた雑誌)”のミックス」と表現し、従来のランウェイ体験に一石を投じる狙いだ。
ロンドン・ファッションウィークが進む中、〈Zara〉は〈Disney(ディズニー)〉とスタイリストのハリー・ランバート(Harry Lambert)とともに、公式のオンスケジュール・プレゼンテーションで新コレクションを発表したのち、〈Inditex(インディテックス)〉の会長マルタ・オルテガ・ペレス(Marta Ortega Pérez)が創業50周年に合わせて〈Zara〉の場をパリへと移した。
全体を通して、カーラ・デルヴィーニュ(Cara Delevingne)、アレックス・コンサニ(Alex Consani)、パロマ・エルセッサー(Paloma Elsesser)、アメリア・グレイ(Amelia Gray)、さらにはリトル・シムズ(Little Simz)やエムラタ(Emrata)まで、セレブリティが来場。巨大な人波を呼び込み、ときにファッションウィークの話題を独占した。ファッションウィークが本来は新鋭デザイナーやラグジュアリーブランドのための時間だとすれば、今季のファストファッションをめぐる圧倒的な“話題量”にはどこか違和感があった。
ロンドン、ニューヨークのファッションウィークのスケジュールでラグジュアリーブランド同等の枠を得て、さらには参加への高難易度で知られるパリでも。業界の中では顕著なシフトが起きており、こうしたブランドをハイファッションの面々と同列に置き、名だたるクラフトマンシップと排他性で知られるブランドと肩を並べさせている。彼らはビッグモーメントを生み、大物セレブを招き、皆の話題をさらった。だが、それでファッションウィークのスケジュールに載るべきなのか?
「答えはシンプルにノーだ」と、モデル/ライターのブレット・スタニランド(Brett Staniland)は語る。ファッション批評と、サステナビリティ報道への歯に衣着せぬ姿勢で知られる彼は続ける。「僕らがどうやら従わざるを得ないこのシステムと業界の力学は、極めてフラストレーションが溜まるものだ。ファストファッションのブランドにとっては得しかない。低品質で使い捨ての服というイメージを、はるかにアップマーケットなものへと“洗い流す”助けになる(いわゆる“haute-washing”)。そしてスケジュール上で隣り合うブランドの高品質でハイファッションなブランディングで、自分たちの見え方に“潤い”まで与えられるのだから」。
さらに重要なのは、とスタニランドは指摘する。これらのブランドが得る報道は、たいてい提示しているコレクション自体を中心にしていないという点だ。「彼らのショーをめぐる報道は服のことではなく、ゲストやモデル、クリエイターの話ばかりだ」と彼は付け加える。また、彼らは他のデザイナーのように春夏、秋冬のシーズン制にも通常は従わない。「彼らのシステムは年中、毎週のように服をドロップし続けているのだから、プレスやバイヤーに“コレクション”を見せる必要なんてない」とスタニランドは続ける。
加えて、過密化するファッションウィークのスケジュールは、同じきらびやかさにアクセスできない新興デザイナーを覆い隠してしまうリスクもある。「残念ながら、資金力のあるファストファッションの“大きくてダーティーなお金”の前では、小さなインディペンデントのデザイナーや組織は、いつだって翻弄されてしまうように見える」とスタニランドは述べ、こうしたスケジュール追加が新進気鋭にとって益より害になり得ると示唆する。
今季はとりわけファストファッション色が濃かったとはいえ、ファッションウィークでこうしたショーが行われること自体は目新しい話ではない。〈Topshop〉の最初のロンドン・ファッションウィークでのショーケースは2005年までさかのぼり、当時はハイストリートとハイファッションの溝をつなぐ、きわめてポジティブな変化として称賛された。
このギャップを橋渡しすることで、より多くの一般の人々が参加し、体験できる“開かれた”ファッションウィークになる、という考え方もある。もしそれが“事情通”(そして何より業界の内側)だけに限られていたなら、そうはならないからだ。
「ロンドン・ファッション・ウィークは、あらゆるレベルのブランドやデザイナーがそのインパクトに寄与するグローバルなショーケースです」と「ブリティッシュ・ファッション・カウンシル(British Fashion Council)」の CEO ローラ・ウィアー(Laura Weir)は説明する。
「歴史的に見ても、ハイストリートはロンドンのファッションストーリーにおいて重要な役割を担ってきました。2000年代初頭の『テート・モダン』での Topshopによるヘッドラインショーから、Marks&Spencerが若手デザイナーと組んで英国スタイルを世界へと広めた例、そして今季のH&Mによるスペクタクルなショーケースまで。ハイストリートブランドは、スケールや予算、そして豊富な人材を持ち合わせており、新進気鋭から老舗までのブランドがもつ創造性・革新性・ストーリーテリングと肩を並べて存在しています。そうしたミックスこそがロンドン・ファッションウィークをダイナミックで、時流に即し、さらに高みに引き上げているのです。そして、英国ファッションのエコシステム全体を映し出し、この街をカルチャーの最前線にとどめているのです」と彼女は語る。
とはいえ、匿名のファッションアカウント Boring Not Comはこう考える。「ファッションウィークには誰にでも居場所がある。ただし、慎重なマネジメントが不可欠だ。さもなければ、何十億ドル規模の予算を持つハイストリートの巨人たちに支配されたスペクタクルになってしまい、ルックブックを用意するのがやっとの新鋭を飲み込んでしまう」
バランスを取ることは極めて重要であり、その一環として、これらのブランドが“自分たちにとって最適な関わり方”を見極めることも大切だ。「もしこの巨人たちが会話に加わりたいのなら、ファッションの未来を生かし続ける新卒クリエイターやインディペンデントの次世代に投資すべきだ」とBoring Not Comは断言する。
実際にそれを体現しているブランドのひとつが〈Pull&Bear(プルアンドベア)〉。「ブリティッシュ・ファッション・カウンシル」の若手支援プログラムと提携し、ルーダー(LUEDER)、チェット・ロー(Chet Lo)、ヨハンナ・パルヴ(Johanna Parv)といったデザイナーのショーを支援している。
つまり、こうしたショーケースがアクセシビリティを高め、都市としての多様性を広げ、セレブの大観衆を呼び込むのは事実だ。だが、それは同時に小規模ブランドを覆い隠し、焦点をプロダクトからセレブへとずらし、そしてファッションウィークを本来以上に“開かれた”ものにしてしまうリスクがある、ということでもある。
続行か撤退かにかかわらず、ファッションウィークにおけるファストファッションの未来は、今後もしばらくは切っても切れない関係であり続けそうだ。相応の席を得るべき舞台裏の新鋭たちにも、スポットライトの一端が届くことを願いたい。

















