ロンドン・ファッションウィーク 2026年秋冬の名場面まとめ
ロンドン・ファッションウィークで外せないハイライトをピックアップ
2月19日(現地時間)より開催された、2026年秋冬シーズンのロンドン・ファッションウィーク。幕開けを飾ったのは、“ロイヤルお墨付き”のショーを行った〈Tolu Coker(トル・コーカー)〉で、その後に〈Harris Reed(ハリス・リード)〉が堂々たるランウェイをお披露目。そして、多くの新人デザイナーにとってインスピレーション源となるショーを見せてくれたのが『セントラル・セント・マーチンズ』の学生たちである。
2日目には、ベルリン発のレーベル〈LUEDER(リューダー)〉による多彩なコレクションに続き、〈Fiorucci(フィオルッチ)〉のプレゼンテーションも行われた。その後も数多くの見逃せないショーが行われ、ファンの多い〈Simone Rocha(シモーン・ロシャ)〉や〈Chopova Lowena(チョポヴァ・ロウェナ)〉なども今季のスケジュールにカムバック。フィナーレを飾るのは、いつも通り〈Burberry(バーバリー)〉だ。
ここからは、編集部が注目したショーをピックアップして紹介する。今後も続くファッション・ウィークのカバレッジにも引き続き注目してほしい。
Tolu Coker
ファッション界の“ロイヤル”も、本物のロイヤルファミリーも姿を見せたのが〈Tolu Coker〉の2026年秋冬のランウェイショーである。今回のショーは、彼女が若手支援プログラム“NEWGEN”を卒業する節目を象徴する、大きなひと区切りとなった。フロントロウにはチャールズ3世の姿があり、Little Simz(リトル・シムズ)によるサプライズパフォーマンスも行われるなど、すでに今季を代表するハイライトのひとつと言ってよさそうだ。圧巻のショー構成や豪華ゲスト、音楽に加え、今回のコレクションでは今後発売予定の全18型によるコラボレーション企画も初お披露目された。その相手が〈Topshop(トップショップ)〉であり、ブリティッシュテーラリングとクラシックなデニム、ヴィンテージライクなディテールを融合させた内容となっている。
Central Saint Martins
毎年変わらず言えるのは、卒業ショーが決して期待を裏切らないということだ。『セントラル・セント・マーチンズ』のショーはその最たる例で、修士課程を修了する学生たちが編集者やブランド、バイヤーの視線を一身に集める場となっている。彼らは、今年もその期待にしっかり応えた。木曜の夜には、23人の若手デザイナーが卒業コレクションを披露し、見どころは数え切れないほどだった。オリ・クラーク(Oli Clarke)は、“Paul Mescal”や“Cigarette”といった目を引くワードを大胆にプリントしたTシャツで、“バズる”デザインの妙を体現してみせた。タバコをモチーフにした表現はほかにも見られ、メイシー・グリムショー(Macy Grimshaw)のルックのひとつでは、硬質で錆びついたようなボディスからタバコが突き出すデザインが登場した。ラストを飾ったのはヤデア(Yodea)で、重機を思わせるほど複雑な構造のルックを披露し、ショーを締めくくった。どれも、次世代デザイナーのポテンシャルを強く感じさせる内容となった。
Harris Reed
〈Harris Reed〉は、2026年秋冬のランウェイショーで初披露した“Fluid Bridal”を通して、新たなインクルーシビティの時代を正式にスタートさせた。会場は『Claridge’s Hotel』のボールルームで、全19ルックから成る自身最大規模のコレクションとなり、そのうち4体はブライダルルック。その1体は、デザイナー自身が初めて手掛けたフルオーダーのウエディングドレスから着想を得ているが、そのドレスの持ち主がカミラ・シャリエール(Camille Charriere)である。ブライダルピース以外のパートでは、これまでのサヴィル・ロウ的な影響から一歩踏み出したテクニカルなテーラリングを追求しており、ヒップに配したパニエや質感のコントラストを効かせた素材使い、タイガープリントなどを取り入れた。
Fiorucci
〈Fiorucci〉は今シーズン、イタリア本社を離れ、ロンドンに待望の帰還を果たした。2026年秋冬コレクションの発表の場として、プレゼンテーション形式を採用した“MEMORIE”コレクションは、ビリヤード台を囲んで披露され、レトロフューチャリスティックな美学に着想。イタリア人アーティスト フランチェスコ・カサロット(Agglomerati)とのコラボレーションで初公開されたこのコレクションは、手作りの仮面舞踏会風マスクが登場。ダルメシアン柄、鮮やかな赤のアクセント、そして天使や唇といったフィオルッチを象徴するモチーフが組み合わされたが、それは往来のブランドのイメージとは全く異なるものだった……。
Mithridate
クリエイティブ・ディレクター ダニエル・フレッチャー(Daniel Fletcher)の就任1周年を記念した〈Mithridate(ミスリデイト)〉の2026年秋冬コレクションは、ブランド発祥の地である広州と、新たな拠点ロンドンとの関係性を想起させるものに。より“大人っぽく”洗練されたコレクションは、ツイード生地、ピーコート、テーラリングといった英国の伝統へのさりげないオマージュと、中国アトリエの職人技を融合。深みのある冬の色合いや、バーガンディ、フォレストグリーン、チョコレートブラウンといった宝石のような色調に鮮やかな赤や黄土色が加わり、ブランドの二面性をさらに際立たせたカラーリングに。また、ブランドがロンドンに新たに設立したバラ地区のスタジオからもインスピレーションを得ており、商店のラベルやボトルプリント、そして周囲の花々を再現したコレクションは、新時代の到来を予感させた。
Natasha Zinko
〈Natasha Zinko(ナターシャ・ジンコ)〉は今季の“Family Biznessのランウェイショーに、スパイス・ガールズ(Spice Girls)のメル・B(Mel B)を起用し、目を離せないほど奔放な家族像を構築した。それぞれのルックは、家族の一員を彷彿とさせるスタイリングが特徴的。だぶだぶの重ね着でベビーシッター、ガウンに包まれた祖父母、レースとハイヒールで“もううんざり”な従兄弟たち。よく見ると、服の中に家の雰囲気が反映されていることにも気付く。ローブをアウターとして着たり、テイクアウトの袋を家宝のように握りしめたり、『eBay』の箱をアクセサリーとして身につけたり。そしてもちろん、この家にはネズミも住み着いていて、毛皮の靴を履いて歩き回っているようだ。そんな今季のショーは型破りで、少し野性的で、まさに〈Natasha Zinko〉らしいものだった。
Chopova Lowena
〈Chopova Lowena〉はカラビナ付きタータンスカートで熱狂的な支持層を獲得したが、単なる一発屋ではない。創業から10年近く、エマ・チョポヴァ(Emma Chopova)とローレン・ロウェナは(Lauren Lowena)は、キッチュの域に迫る民俗的なテキスタイルやプリントを、確固たるブランドコードへと昇華させてきた。今シーズンのプレゼンテーションでは、リージェンシー時代のシルエットにゴルフコースファッションを融合させ、シルバーのハードウェアをふんだんに用いた。さらに新たなインナーウェアラインを発表。これらのブラジャーや下着には、遊び心あふれる詩や漫画風の動物がプリントされている。会場はイズリントンの19世紀建造物『クラフツ・カウンシル・ギャラリー』。ヴィクトリア&アルバート博物館の専門家がスタイリングしたマネキンがミニゴルフコースに囲まれ、花を飾ったカップケーキや花びら入りのカクテルが振る舞われた。ランウェイがなくても、ロンドン・ファッションウィークに記憶に残る瞬間を創出できることを証明した一幕だった。
TOGA
デザイナー 古田康子の指揮のもと、〈TOGA(トーガ)〉は“PULL, CRUMPLE, PRESSED”と題したコレクションで、生地が物理的ストレスにどう反応するかを探求。衣服を積極的に引き伸ばし、寄せ集め、歪めることで、チームは構造的な剛性と適応性のある着用感の微妙なバランスを強調する即興的な変化を取り入れた。コレクションの注目すべきルックには、大型のファー製ハンドウォーマー、スパンコールのスカートの裾飾り、大きな宝石をあしらったブローチを採用。また、中身が見える窓として透明ポケット付きのチェック柄トートバッグも導入された。
CompletedWorks
ジュエリーブランド〈CompletedWorks(コンプリーテッドワークス)〉は、ローラ・ウォルドレン(Laura Waldren)のによるマイクロプレイ『Good Food, Good Friends』を上演。ジェマイマ・カーク(Jemima Kirke)がレジーン・マックイーン役、カミーユ・シャリエール(Camille Charrière)が彼女のアシスタント役を演じた。ハイパースタイライズされたディナーパーティーの準備は、カークがブラッディ・マリーを作りながら、ユーモアを通してアイデンティティとディスプレイを考察するという、風刺的なコメディに。プレゼンテーションでは、ブランドと〈ASICS(アシックス)〉が新たにコラボレーションしたカスタムスニーカーのラインも紹介された。このクリエイティブなショーケースは、土曜日の素晴らしいスタートを切るのにふさわしいものとなった。
Johanna Parv
デザイナーであり、自転車愛好家としても知られるジョアンナ・パーヴ(Johanna Parv)は、イーストロンドンで2026年秋冬コレクションのショーを発表した。ショーでは、ゲストが座れる自転車のシートを用意。サイクリングギアと美学にインスパイアされた服作りで知られる彼女は、柔らかなナイロン素材を使用したスリムフィットのジャケットとパンツをお披露目した。各アイテムは、ストレッチ素材のアイテムや隠しジッパー、コンパートメントなど、実用性を重視。パレットは黒とグレーを基調とし、時折赤のアクセントが効いていた。サイクリングがこれほど美しく見えることはかつてなかっただろう。
Di Petsa
〈Di Petsa(ディ・ペッツァ)〉は、ダミアン・ハースト(Damien Hirst)がデザインした贅を尽くしたダイニングルーム『バッカナリア』で、最新のショーを開催。“メデューサの恋人”と題されたコレクションは、力、エロティシズム、そして再生といったテーマを探求し、ゴルゴンを怪物ではなくミューズとして再解釈した。モデルの肌に刻まれた蛇のタトゥー、生地にエンボス加工された鱗のようなテクスチャ、そして過去のシーズンよりもダークで危険な色合いなど、細部にまで蛇のモチーフが散りばめられている。また、レオミー・アンダーソン(Leomie Anderson)がレザーのウェットルックドレスをまとって登場し、ブランドの力強い新時代の幕開けを告げた。
Labrum
フォデイ・ダンブヤ(Foday Dumbuya)の〈Labrum(ラブラム)〉2026年秋冬コレクションは、布が文字通り触れられる歴史であることを証明。会場にはいつものようにエネルギーとコミュニティ意識が溢れ、日本の藍染デニムにレーザー刻印された“パスポートプリント”で最高潮に達した。これは、旅の煩雑さを質感へと昇華させる巧みな演出だ。ランウェイは、ヘリテージを体現したランニングギアと、タカラガイのモチーフが刻印された〈adidas(アディダス)〉とのコラボレーションで最高潮に達した。
Simone Rocha
〈Simone Rocha〉は今シーズン、〈adidas Originals(アディダス オリジナルス)〉との新たなコラボレーションを発表。本コラボでは、ウィメンズウェア、スニーカー、アクセサリーを展開した。〈adidas Originals〉のスポーツヘリテージと〈Simone Rocha〉のシグネチャーを融合させたこのコレクションでは、クラシックなトラックジャケットにチュールスカートとパフスリーブを合わせたり、スポーティなショートパンツをシルクのホットパンツにアレンジしたり、スリーストライプのロングスリーブにベビーピンクのフリルをあしらったりと、まさに圧巻の仕上がりとなった。
Burberry
ダニエル・リー(Daniel Lee)はロンドン・ファッションウィークで〈Burberry〉の最新コレクションを発表し、2026年秋冬シーズンの公式閉幕を告げた。いつものように、このコレクションはブランドのロンドン中心のルーツからインスピレーションを得ており、リーによると“ロンドンらしい外出”へのオマージュに。ロメオ・ベッカム(Romeo Beckham)とロージー・ハンティントン=ホワイトリー(Rosie Alice Huntington-Whiteley)がランウェイに登場し、FKAツイッグス(FKA twigs)のサウンドが流れるこのショーケースは、〈Burberry〉をかつてないほど現代に蘇らせた。

















