2027年春夏メンズ・ファッションウィークで今いちばん“アツい”ショーは?
〈Prada〉のスキニーシルエットから〈Simone Rocha〉による待望のメンズデビューまで
2027年春夏メンズ・ファッションウィークが正式に開幕。まずはイタリア・ミラノを皮切りに、その後はパリへと舞台を移し、ワールドカップ熱と猛暑、そしてファッション狂騒が渦巻く中で今シーズンが進行していく。
今季のスケジュールにはお馴染みのビッグメゾンに加え、チェックしておきたい初登場ブランドも並ぶ。ミラノでは、〈Simone Rocha(シモーネ・ロシャ)〉がブランド初となるメンズコレクションを披露し、トラディショナルなテーラリングをロマンティックに再解釈した。一方パリでは、マイケル・ライダー(Michael Rider)が〈CELINE(セリーヌ)〉のメンズコレクションを初めてお披露目する予定で、同時にサラ・バートン(Sarah Burton)が自身初となるメンズショーを〈Givenchy(ジバンシィ)〉で行う。
そのほか、〈Hermès(エルメス)〉は、スタジオデザインによるコレクションをグレース・ウェールズ・ボナー(Grace Wales Bonner)が来年1月にクリエイティブディレクターとしてデビューするのに先駆けて発表。そして当然ながら、視線が集中するのは〈Dior(ディオール)〉のランウェイで、そこでジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)による同メゾン3度目のメンズコレクションが展開される。
会場には、フットボール熱がスタイリングにも滲み出し、ナイトライフ由来のグラマーなムードがタイムラインを埋め尽くし、思わぬサプライズ出演もあるかもしれない。ここからは、現時点での2027年春夏シーズンのお気に入りのショーをピックアップして紹介する。
Saul Nash
ロンドン拠点の〈Saul Nash(ソール・ナッシュ)〉はミラノの体操クラブ『Milanese Gymnastics Society Forza e Coraggio』を会場に、新作コレクション “STANCE”を発表。本コレクションでは、男性性や強さ、欲望をユニークな切り口で掘り下げ。スポーツ施設というロケーションを起点に、動きにフォーカスしたデザインを展開した。これらは、動く男性の肉体を讃えることを念頭に構築されている。またショーでは、〈lululemon(ルルレモン)〉との最終章となるコラボとして“SLNSH”コレクションもグローバルローンチに先駆けて公開された。
Simone Rocha
〈Simone Rocha〉は、2027年春夏シーズンに向けた初の本格メンズランウェイショーを開催した。会場は、フィレンツェの歴史ある劇場『Teatro della Pergola』。演劇的な世界観を通して、モダンな男性像を探った。構築的なテーラリングに、パールやレース、生花といった繊細な要素を掛け合わせ、従来の男性的ワードローブをまるごとアップデートするようなコレクションに仕上げている。
Prada
〈Prada(プラダ)〉の2027年春夏は、“スキニーシルエット完全復活”を高らかに宣言する内容に。デザインを手掛けたのは、もちろんミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)とラフ・シモンズ(Raf Simons)。ランウェイは、精度への徹底したこだわりと、装飾過多をきっぱり排したミニマルな姿勢が際立っていた。デニム、Tシャツ、Gジャンといったワードローブの定番を軸に、タフなレザーやクロップド丈のテーラリング、そしてほとんどのルックにスキニーシルエットを掛け合わせてエッジを効かせている。メンズコレクションでありながら、ショーの幕開けを飾ったのはおさげヘアのモデル ジュリア・ノビス(Julia Nobis)で、ボディコンシャスな白デニムとオーバーサイズのブレザーという装いで登場。その後には彼女のドッペルゲンガーのような男性モデルが、同じくおさげヘアでオールブラックレザー姿で続いた。
Saint Laurent
クリエイティブディレクターのアンソニー・ヴァカレロ(Anthony Vaccarello)は、今回も〈Saint Laurent(サンローラン)〉のテーラリングを通じて新たな美学を提案。2027年春夏コレクションは、抑制と省略を表現の形とする人物像に敬意を表し、ショーノートでは映画『リプリー』のキャラクター トム・リプリーに影響を受けているとも語った。煙のなかを歩くモデルたちは、光沢のあるゴールドのトレンチコートやスリムフィットのパンツから、鮮やかな色のアスレチックなブルゾンジャケットまで、さまざまなルックを着用。また、フットウェアとして、トレンドのジェリーシューズを彷彿とさせる彫刻的で透け感のあるデザインを、イブニングシューズへと昇華したモデルをお披露目した。
Louis Vuitton
〈Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)〉では、ファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)がサーフィンをテーマに、“ダンディな体験”と名付けたコンセプトを中心にコレクションを展開した。ショーでは、巨大な波のセットからモデルたちが登場し、デザイナーは自身のトレードマークであるリラックスした仕立てと、サーフカルチャーの気取らないスタイルを融合させた。使い込まれたスーツやウェットスーツを彷彿とさせるアイテムに、海をイメージした装飾やスケートカルチャーの要素をミックス。都会と海岸が一体となったコレクションを創り上げてみせた。
Ami Paris
〈AMI PARIS(アミ パリス)〉は、パリの街を歩く人々をイメージし、典型的なパリジャン像を探求した。特定の服に対する人々の感情的な繋がりを重視し、幼い頃に着ていたTシャツや借り物のスーツなど、大切にしていたアイテムから着想。クリエイティブディレクターのアレクサンドル・マテュッシ(Alexandre Mattiussi)は、いつものように男性らしさと女性らしさの境界線を曖昧にし、気負いのない着心地のワードローブを提案した。
Dior
ジョナサン・アンダーソンが再びやってくれた。〈Dior〉のメンズコレクションでは、キャラクター・ドレッシングの真髄を披露。今回は、豪華なホームパーティーを洗練させたようなスタイルを提案した。モデルたちは、緩んだネクタイ、破れたジーンズ、そして裾を引きずるガウンを身にまとい、キャットウォークをゆったりとウォーク。翌朝の混沌とした雰囲気の中に、ほんのりとしたエレガンスが漂うような空気を演出した。ドレープ、ほつれ、そしてミスマッチな要素が織り交ぜられたこのスタイルは、上品なパジャマパーティーとフォーマルなフレンチテーラリングが融合した、まさに唯一無二の世界観に。
Rick Owens
〈Rick Owens(リック・オウエンス)〉は、2027年春夏コレクションで〈adidas(アディダス)〉とのコラボレーションを発表し、すでにソーシャルメディアで話題に。このコラボレーションでは、スニーカー、膨張式ジャケット、内部ファン付きのショーツにその技術力を注ぎ込み、パーソナルエアコンシステムを作り出した。同ブランドは、このコレクションで猛暑対策を万全に整えたと言えるだろう。
Acne Studios
〈Acne Studios(アクネ ストゥディオズ)〉は、オフィスウェアを個性、時代、そしてドレスコードが遊び心たっぷりに融合した新たなスタイルへと昇華させた。定番のビジネスアイテムにロックンロールのエッセンスとブランドを象徴するデニムをミックスしたこのコレクションは、斬新なテーラリング、スーツの代わりにレザージャケットなどのアイテムに、そして鮮やかなホワイトからジェラートを思わせるピンクやピスタチオまで幅広いカラーパレットを落とし込んだ。従来のプロフェッショナルなイメージを、職場という枠を超えた表現力豊かな個性的なユニフォームへと変貌させたこのコレクションは、あなたが知っているオフィススタイルとは全く異なる。
Dries Van Noten
〈Dries Van Noten(ドリス・ヴァン・ノッテン)〉の2027年春夏コレクションは、色彩、流れるような質感、そして男性のための女性らしさの極みと言えるショーだった。砂のような色合いが海の青や夕焼けの色合いへと溶け込み、ショートパンツにはゆったりとしたロングトレンチコートや透け感のあるシャツがあわせられていた。ジュリアン・クラウスナー(Julian Klausner)は、このほとんど何も着ていないかのようなレイヤリングで、パリの猛暑に完璧に対応していた。クラウスナーがクリエイティブディレクターに就任してから3度目のメンズウェアショーとなるが、ウィメンズウェア部門でのこれまでの経験が彼女の大きな強みとなった。それは、近年多くのメンズウェアデザイナーが、より柔らかく繊細なシルエットへと傾倒し続けているからだ。コレクション全体を通して、ランジェリーや背中の開いたホルターネックトップスからバレエシューズまで、あらゆるものからインスピレーションを得た要素が見られた、魅惑的なショーケースだった。
Doublet
〈Doublet(ダブレット)〉は最新コレクションを通じて、ある一日の生活風景を提示した。空気や木材、さらにはバナナといった素材の未来を探求し、近い将来、資源の使い方が必然的に変化し、それが新たな“日常”となっていく様子にフィーチャーしたのだ。たとえ今、それらが未来的なものに聞こえたとしても、新しい素材は私たちのありふれた日常に寄り添う存在であり続けるだろう。朝、まだ眠気まなこで選ばれ、仕事場へ同行し、そして夜には椅子の背に無造作に掛けられる──そんな日常の一部として。ショーノートにはこう記されていた。「未来とは、もしかすると壮大で遠いものではなく、私たちが気づかないうちに、日々の生活へと静かに溶け込んでいくものなのかもしれません」。
Willy Chavarria
〈Willy Chavarria(ウィリー・チャバリア)〉は、激動の時代において、コミュニティやルーツ、そして“共にいること”から生まれる強さを表現したコレクション “Comunión”を発表した。ショーの根底には「美しさは分かち合うことでより力強いものになる」という思想があり、色あせたキッチンの壁や花柄のテキスタイル、受け継がれてきた品々といった、家庭での親密な記憶がデザインの着想源に。展開されたアイテムは、彫刻的なシルエットのシフトドレス、シアーなアウター、テーラードスーツ、スクールボーイ風のスタイルを取り入れたリラックス感のあるコーディネート、そしてセンシュアルさと力強さを両立させたウィメンズウェアなど多岐にわたった。さらに、〈UGG(アグ)〉とのコラボレーションモデルが初めてお披露目。ブーツやスリッパといった同ブランドのアーカイブに着想を得たシルエットが、チャヴァリアならではの“力強くも親しみやすい”デザインの視点を通して再構築された。なお、ロメオ・ベッカム(Romeo Beckham)もランウェイに登場。
Maison MIHARA YASUHIRO
三原康裕の手掛ける〈Maison MIHARA YASUHIRO(メゾン ミハラヤスヒロ)〉は、きらめくシルバーのホイルを背景に、実用性を重視した“Endless Summer”と題したショーを展開。ショーの資料は極めてシンプルで、“I hate summer”というフレーズを軸にした詩が添えられているのみ。これは、驚きがありつつも、どこか共感を覚える内容となった。猛暑が続く今、多くの人が同じように感じているのでは? そこで同ブランドは、快適さと控えめなエレガンスを融合させ、レイヤードにも適した、長く愛用できるワードローブを提案した。


















