kallyu カユウ・シュウが探求する人と服の静かな関係性 | Interviews
トレンドの消費速度に逆らい時間とともに深まる共感を紡ぐブランドの思考を探る
去る8月21日(金)〜23日(日)の期間で、中国人デザイナー カユウ・シュウ(Kayuu Zhou)が手掛けるアパレルブランド〈kallyu(コユー)〉が、東京・新宿のセレクトショップ『jackpot』にて2度目となるポップアップを開催した。
これに際して『Hypebae Japan』では、新宿の街でリラックスした空気感のもと撮影された特別ビジュアルのBTSを独占公開。中国の人気クリエイター/モデルであるタンスアン(Tansuan)のほか、彼女が普段から親交のあるモデルたちの和気藹々とした撮影風景を捉えてもらった。
今回は、このポップアップにあわせて、目先のトレンドや“バズ”に流されず、着る人と重なることで完成する静かな服作りを貫くカユウ・シュウにインタビューを実施。お気に入りの映画作品のひとつであるという『2001年宇宙の旅』に通ずるミニマルな美学から、デザインをする際のスタジオでの習慣、そして『jackpot』との親密な関係性まで、彼女のリアルな言葉で紐解く。
Hypebae:初めて服に関わる仕事をしたいと思った、リアルな年齢とその出来事があれば教えてください。
カユウ・シュウ:服に関わる仕事をしたいと本格的に思い始めたのは、中国で大学に通っていた頃です。
大学卒業後、文化ファッション大学院大学に通うために日本へ来ました。ちょうどコロナ禍で中国へ帰ることが難しかったこともあり、日本でモデル事務所に所属し、本格的にモデルとして活動を始めました。
モデルとしてさまざまな撮影に参加する中で、日本のクリエイターたちと出会い、「この人たちと一緒にものづくりをしたい」と思うようになりました。そうした出会いや経験も、日本で自分のブランドを始めたいと考えるようになったきっかけのひとつです。
カユウさんからみた、日本の面白いところはどんなところですか?
日本の面白いところのひとつは、すごく細かい部分にまで真剣に向き合うところだと思います。服の表からは見えないようなディテールだったり、お店のパッケージやディスプレイだったり、すごく日常的なものでも、“なぜこうあるべきなのか”を考え、時間をかけて作られているものが多い気がします。日常の些細な出来事や生活のディテールからインスピレーションを得ることも多いです。
それと、東京はすごくコントラストのある街だと思います。渋谷や原宿などを見ても、秩序がある一方ですごく自由だったり、ちょっと変わった人やカルチャーもたくさんある。みんな同じルールの中で生活しているように見えて、実はそれぞれ自分だけの小さな世界や好きなものを持っている。そのギャップが、ずっと東京の面白いところだと感じています。
多くのブランドが“バズ”を狙う時代に、kallyuが妥協せず“共感してもらうこと”を大事にし、ファンになってもらうために守り抜いているルールはありますか?
“このアイテムがバズるかどうか”ということは、実はあまり考えていないですね。もちろんブランドをやっている以上、周りの反応は気になりますし、“どうしたらもっと多くの人に見てもらえるか”を考えることもあります。ですが、そればかりを意識しすぎるとデザイン自体も消費されるスピードが速くなって、すぐに忘れられてしまうのではないかと思うんです。
それよりも、自分自身が本当に着たいと思えるか、そして時間が経ってから見返した時にも変わらず“好きだな”と思えるかということを大切にしていて。
kallyuの服は、一目すごく主張が強いものばかりではないかもしれません。ですが、実際に着て時間を過ごしていく中で、シルエットや構造、ちょっとしたディテールの違いに少しずつ気づいてもらえるようなデザインに仕上げることを意識しています。クラシックなアイテムをベースにしつつも、他にはないディテールや工夫を忍ばせる。一気にたくさんの人を惹きつけることよりも、そうやって少しずつ好きになってもらって長く関係を築いていけることの方が、自分にとっては大切だと思っています。
カユウさんは映画からも大きく影響を受けていると思いますが、もしkallyuの服を登場させるとしたら、どの映画を挙げますか? ひとつ教えてください。
スタンリー・キューブリック監督の『2001: A Space Odyssey(2001年宇宙の旅)』です。キューブリック監督の映画の画面構成や世界観がすごく好きなのですが、特にこの作品は1960年代に作られたにもかかわらず、当時の人が想像した未来や宇宙の描き方、静かでミニマルな世界観、ビジュアルや衣装、色使いにとても惹かれます。
自分自身、特定の服単体というよりも、服と身体、そして空間を含めた“全体の雰囲気やビジュアル”をとても大切にしています。建築的でクリーンな空間の中で、kallyuの服があの世界観に入ったらどう見えるのか、とても興味がありますね。
今の東京のストリートシーンやコミュニティは、kallyuのアイデンティティにどう影響を与えていますか?
影響はかなり大きいと思います。ただ、“今東京で何が流行っているか”というところから直接インスピレーションを受けるというよりは、身近な友人たちや、ポップアップやショップに来てくださるお客様がどう服を着ているか、違うブランドのアイテムをどうミックスしているかという点に刺激を受けています。
東京には小さなコミュニティがたくさんあって、それぞれに独自の感覚やスタイルがありながら、人やカルチャーが自然に行き来しています。kallyuはウィメンズブランドとして打ち出していますが、実は展示会やSNSのフォロワーも半数ほどは男性で、性別を問わずパーソナルに着こなしてくださる方が多いんです。誰かの手に渡って、その人なりの着方をしたり、別のアイテムと組み合わせたりすることで、初めてその服の新しい表情が生まれる。そういう多様でリアルな環境の中で、kallyuも少しずつ自分たちなりの立ち位置を見つけているように感じます。
シーズンのデザインをスタジオで考える際に、欠かせないアイテムは?
CD Playerです。仕事中はほとんどいつも音楽を流しています。タワーレコードに行ったり、ヴィンテージのCDを探したりして集めるのも好きで、スマホで聴くよりもCDを1枚選んで最初から最後まで聴く時間が自分にとってはデザインのモードに入るためのちょっとした習慣になっています。
シティポップや少しゆったりとした昔の曲など、古い質感や慣れ親しんだ音を流すことが多いですね。作業中に意識して聴いているというよりは、音が流れている空間そのものが、作業に没頭するための良い空気感を作ってくれています。
jackpotでのpopupは2度目ですよね。BTSのフォト&ムービーをHypebaeで公開しましたが、今回の特別ビジュアルを撮影した際の、思い出深いエピソードはありますか?
今回の撮影は、全体的にすごくリラックスした雰囲気だったのが印象に残っています。テーマやシチュエーションを作り込みすぎず、新宿の街を歩いたり、喋ったりしながら自然な流れで撮影していきました。
実は撮影の前日に、友人のタンさんと一緒にいて「明日何するの?」「撮影だよ」「一緒に行って撮ってもいい?」という何気ない会話から、急遽彼女もモデルとして参加してくれることになったんです(笑)。jackpotのセレクトアイテムとkallyuをスタイリストのナナちゃんが組み合わせてくれて、jackpotチームのみんなで街を歩きながら「ここ良さそうだね」とロケーションを決めていきました。日常の延長線上にある偶然性やリラックスした空気感がそのまま写真や動画に反映されていて、すごく良いビジュアルになったと思います。
前回に続いてカユウさんのセレクトしたアイテムも並びますが、セレクトの基準は?
実は基準はすごくシンプルで、まず自分自身が本当に着たいと思うかどうかです。ただ、kallyuに近いテイストのものをあえて選ぶというよりは、少し違うものを組み合わせた時に新しい見え方が生まれるかどうかを大事にしています。
今回のビジュアルでも、スカーフの巻き方にこだわったり、ドレスにスニーカーやベルトをあわせるスタイリングを取り入れました。スタイリングの一番面白いところは、そういう意外な組み合わせから生まれるバランスだと思っています。なので、jackpotにある魅力的なアイテムとkallyuをミックスして、新鮮なスタイルを提案しています。
今後jackpotと一緒に仕掛けたい、服の枠を超えた面白いプロジェクトやイベントの野望はありますか?
必ずしも大きなプロジェクトである必要はなく、音楽や食、映画などを通して、普段親交のある人たちが集まれるコミュニティイベントをやってみたいです。
jackpotはもともと、ただ服を売るためだけの場所ではなく、人々が集まるコミュニティのような空間だと思っています。実際、撮影の合間にみんなでソファでくつろいだり、友達や業界の人がふらっと集まって話したりするような温かい雰囲気があるんです。なので、例えばある夜にお店に集まって、飲んだり話したりしながら、そこから偶然何か新しいアイデアが生まれるようなイベントができればいいなと。毎回のコラボレーションが必ずしも“新しい商品を作る”ことだけではなく、あとから思い出せるような素敵な空間や体験を一緒に作っていけたら嬉しいです。