ニューヨーク・ファッションウィーク 2027年春夏ランウェイリキャップ
〈COACH〉の創立85周年を祝うコレクションから〈Cult Gaia〉が提案する花咲くようなサマーワードローブまで
世界のファッションシーンがニューヨークに集結し、2027年春夏シーズンが幕を開けた。街を代表する才能たちが、エネルギーに満ちた注目のデビューと、暖かい季節の装いを新たな視点で披露している。ソーホーの石畳からブルックリンのインダストリアルな倉庫まで、ニューヨーク・ファッションウィークはカルチャーを形づくるトレンドの発信地であり、今季もその存在感を示すことになりそうだ。
2027年春夏シーズンは充実したスケジュールのもと、ニューヨークのランウェイで幕開けから終幕まで記憶に残る瞬間が生まれそうだ。すでに〈COACH(コーチ)〉ではアニバーサリーを祝うショーが、〈Cult Gaia(カルト・ガイア)〉ではバカンスのワードローブを彩るスタイリングが多数発表されている。
話題を呼ぶフロントロウの瞬間、映画のようなランウェイ演出、あるいは次のシーズンのムードを決める斬新なスタイリングまで。2027年春夏のニューヨーク・ファッションウィークは、この街のファッションへの熱がこれまで以上に高まっていることを証明している。
ニューヨーク・ファッションウィーク 2027年春夏を象徴する注目のショー、キーコレクション、そして見逃せないディテールを厳選してお届け。
Conner Ives
〈Conner Ives(コナー・アイヴス)〉にとって米国での活動再開を告げる今回のショーは、記憶に残る凱旋となった。英国での経験を携えて帰還した彼が発表した本コレクションは、ニューヨークとロンドンという、対照的なスタイルや歴史を持つふたつの都市を融合させたものに。ふたつの都市の視点を通して、ファッションを色鮮やかかつセクシーに解釈した。ランウェイは、楽しく、情熱的で、華やかかつ躍動感に満ちており、デザイナー自身の個性を完璧に映し出していた。闘牛士の衣装やフラッパー・ドレス、レトロなディナーパーティーの装いといった、コスチュームの要素を取り入れたデザインは、シルク素材や手描きの筆致、そして計算し尽くされたプロポーションによって、より洗練されたスタイルへと昇華。ライラ・モス(Lila Moss)、アイリス・ロウ(Iris Law)、ドミニク・ジャクソン(Dominique Jackson)、デュポン・ツインズ(The Dupont Twins)といった豪華な顔ぶれがランウェイを彩り、これ以上ないほどの盛大な形でニューヨークへの帰還を果たした。
Sandy Liang
〈Sandy Liang(サンディ・リアン)〉は、内なる子供と親友である女の子のために、技術的な実用性と甘くおとぎ話のようなファンタジーを組み合わせたコレクションを発表した。モジュール式のワクワク感と、走り回るために着飾ることを楽しむこのコレクションは、ゴープコアと遊び心のあるプリンセスのディテールをバランスよくミックス。ショーでは、柔らかなフリルをあしらったトラックパンツやイルカがキスしたようなトラックジャケット、透明なスパンコールでキラキラ輝くレーススカートなどが登場した。アクセサリーも豊富で、マルチポケットのハンドバッグ、“Sandy Liang X3000”のロゴを配置したウエストポーチ、宝石の目が付いたウサギの靴、鮮やかなスリッパ風のバレエシューズなど、ノスタルジアとフューチャリズムが融合したものがお目見え。テーラードワークウェア、流れるようなリボンのレッグウォーマー、ブーケのようなヘアクリップを軸に、〈Sandy Liang〉は人生の最も平凡な瞬間を祝うために作られた実用的な服を、愛らしく魅力的な形で提案した。
KidSuper The People’s Runway
ニューヨーク・ファッションウィークの一環としてブルックリンの区庁舎『ブルックリン・ボロ・ホール』を舞台に、〈KidSuper(キッドスーパー)〉のコルム・ディレイン(Colm Dillane)はブルックリン区長のアントニオ・レイノソ(Antonio Reynoso)とタッグを組み、第2回の“The People’s Runway”を開催した。ファッションの草の根文化を称えるこの一般公開イベントでは、地元の才能ある5人のクリエイターが作品を披露。この取り組みでは、彼らはそれぞれ5,000ドルの助成金とメンターシップ、そしてNYFWという公式な場で自身の作品を発表することができる。異なるデザイン要素の衝突、息をのむような独創的なデザイン、そしてエネルギッシュなサウンドトラックに彩られたこのショーは、ファッション・ウィークの醍醐味を存分に感じさせるものとなった。イベントの熱気が最高潮に達する中、フィナーレにはワイクリフ・ジョン(Wyclef Jean)が登場し、さらにローリン・ヒル(Lauryn Hill)を呼び込んでサプライズの再共演を果たした。ディレインは、地域主導かつ民主的であり、真のニューヨーク・スピリットに根ざしたこのイベントを通じ、ランウェイを再び地域の人々の手に委ねることこそが、最もエキサイティングな事象を生み出すのだと改めて証明した。
Dauphinette
2027年春夏コレクション “Lady Mondegreen”で、〈Dauphinette(ドファネット)〉のデザイナー オリビア・チェン(Olivia Chen)は、変容、記憶、そして人生の不完全さの受容を探求。『ジェネシス・ハウス』で発表されたランウェイでは、切りっぱなしの裾、油絵の人物像、そして本物の押し花を透け感のあるシルクに融合させた革新的な自社製テキスタイル フローガンザの初披露を通して、繊細なロマンスと触覚的な芸術性をミックスさせた。ペイントされた〈UGG〉ブーツや森に浸した〈PUMA(プーマ)〉Speedcat(スピードキャット)、ビクトリア朝風のガラスビーズがちりばめられた〈ThirdLove(サードラブ)〉のブラなど、あらゆるディテールで変化の美しさを表現。1,900本以上の保存花と数百時間に及ぶ手作業によるビーズ細工を用いた内省的かつ緻密に作られたチェンの最新デザインは、過去と未来の間の瞬間に美しさが花開くことを示した。
Kim Shui
2027年春夏コレクションで、〈Kim Shui(キム・シュイ)〉はニューヨークの街を日常の劇場へと変貌させた。ショーでは、ドラマチックな演出とスペクタクルを自然の美しさと融合させ、パフォーマンスと変容の芸術を探求。京劇の表現豊かな身振りや極楽鳥の精緻な舞いからインスピレーションを得たこのコレクションは、鮮やかな色彩、長く躍動感のあるフリンジ、そして優雅に揺れる羽根のアクセントを通して、動きを感情へと昇華させた。伝統的で儀式的なデザインと現代的な官能性が融合し、構造的なブロケード、精緻な刺繍、コルセット風のボディスが、透け感のあるレースのカットアウトや霊芝(れいし)のようなドラマチックなヘッドピースと見事に調和していた。
Christian Cowan
街を見下ろす高層の会場『ザ・グラスハウス』で発表された〈Christian Cowan(クリスチャン・コーワン)〉の2027年春夏コレクションは、往年のハリウッドが持つ刺激的で幻惑的な魅力を取り入れ、銀幕の華やかさを解体/再定義するものに。ナサニエル・ウェスト(Nathanael West)の小説『いなごの日』から着想を得たコーワンは、女優という存在を“神話”であると同時に“自らのイメージを構築する作り手”としても捉えた。ランウェイは、クリスタルをあしらったコルセット、大胆に胸元が開いたシルクのガウン、彫刻的なタフタ素材のフラワーモチーフ、そして鮮烈な色使いで彩られた。それぞれのアイテムは、1930年代のドラマチックなビーズ装飾付きトレーンや1950年代のレースの襟といった当時のテキスタイルを、現代的なデザイン要素と融合。脚を美しく長く見せる〈Schutz(シュッツ)〉のクラシックなシューズとコーディネートされたスタイリングも印象的だった。ハリウッド黄金時代のスタイルを、2020年代後半にふさわしい新たなクラシックスタイルへと見事に昇華させたコレクションに。
Tyler McGillivary
今季の〈Tyler McGillivary(タイラー・マクギリヴァリー)〉は、仮想ビデオゲームのヒロイン、ペタルのデジタルワードローブとしてデザインされたコレクション “Botanica”で、ピクセル化された夢の世界へと誘った。2000年代のテクノロジー美学や、『パプリカ』のようなカルト的なシュールレアリスム映画からインスピレーションを得たランウェイでは、グリッチ効果の二重露光、霞がかったシアー素材のレイヤリング、ヴィンテージの園芸書から抜き出したフォトリアリスティックなプリントを通して、自然とアニメーションが融合。モデルたちは、雨水が滴る模擬的な花の森や、アーティストのクララ・シュワース(Clara Schweers)による彫刻されたガラスの花々の中を、コバルトブルー、フクシア、マスタードイエローの鮮やかなパネルを身にまとい、歩き回った。そしてパフォーマンスは、『マトリックス』のようなシステムクラッシュで最高潮に。〈Tyler McGillivary〉がハイコンセプトなSFストーリーテリングを、鮮やかで着やすいファンタジーへと昇華させる才能を証明した。
Tory Burch
今シーズン、〈Tory Burch(トリー・バーチ)〉はイサム・ノグチが手掛けた『サンケン・ガーデン』で、贅沢な女性らしさとアメリカの実用主義を融合させ、着飾ることの純粋な喜びとユーモアを表現したコレクションを発表。このコレクションでは、女性がどのように遊び心を持ってワードローブを組み立てるかを探求し、シャープで型破りなテーラリングやトレンチコートのようなゆったりとしたオペラコートを、アスレチックニット、ヒップを低くしたスカート、ドローストリングパンツとのコントラストを描いた。それぞれのアイテムは、シルクで軽やかに仕上げたメンズライクなウールから、シェニール織りのテリークロス、液体釉薬を施したクレープ・デ・シンまで、質感が主役に。カラーパレットは、コーラル、ターコイズ、バターイエローといった鮮やかな色彩が、クールなニュートラルカラーによって際立たされていた。小物類には、遊び心のある紙袋をイメージしたリー・ラジウィル(Lee Radziwill)のショッパーバッグ、彫刻的なオープントゥパンプス、マザーオブパールのチャームなどもお目見え。気負いのない洗練された自己表現の、楽観的な見本を示した。
Tommy Hilfiger
〈Tommy Hilfiger(トミー・ヒルフィガー)〉は、ニューヨーク屈指の伝説的なランドマークである『プラザホテル』を舞台に、2027年春夏コレクション “Plaza Prep”を発表。本コレクションでは、ブランドの真髄である“アメリカーナ”のDNAを基盤としつつ、アップタウンの伝統とダウンタウンのクールな感性を融合。アイビーリーグの不朽のアイコンを、現代的なプロポーションや新鮮なカラーパレットで再解釈した。ブランドの象徴である赤/白/青に加え、鮮やかなイエローやグリーンを際立たせたモダンなシルエットがランウェイを圧巻。そのラインナップは、エンブレム刺繍を施したコンパクトなポロシャツやオーバーサイズ・ポロから、カラーブロックのラグビードレス、イサカストライプのオックスフォードシャツまで多岐にわたる。上質なスエード素材や、1990年代にインスパイアされたスケートスニーカー、ボートシューズが、カレッジ・スタイルのムードをしっかりと引き立てていた。また、ショーはジジ・ハディッド(Gigi Hadid)がオープニング、ロメオ・ベッカム(Romeo Beckham)がモデルとしてフィナーレを飾るとい豪華な構成に。加えて、名だたるセレブリティがフロントロウを飾り、Slayyyter(スレイター)によるサプライズ・パフォーマンスも実施。新時代に向けた、〈Tommy Hilfiger〉のプレッピー・スタイルの進化を体現するものとなった。
COACH
創立85周年を迎えた〈COACH〉は、クリエイティブ・ディレクターのスチュアート・ヴィヴァース(Stuart Vevers)のもと、使い込まれたものが持つエレガンス、大切な記憶、そして暮らしに寄り添うスタイルの美しさを讃えるラブレターとして2027年春夏コレクションを仕上げた。Mazzy Star(マジー・スター)を思わせる空気をまといながら1990年代のノスタルジアを表現した今季は、記念すべきアニバーサリーイヤーにぴったりなお祝いムードたっぷりのプロダクトを展開。それぞれにあしらわれた、未処理のキャッチステッチ、淡いパステル、燻したような金具などのディテールが、ヴィンテージのような質感を演出した。時を重ねるほどラグジュアリーは魅力を増すことを示すとともに、節目の誕生日を祝うパーティーハットも登場。〈COACH〉の新たな章は、ブランドの豊かな歴史と次世代を鮮やかに繋いでいることを表現した。
PIPENCO
今季、ローレン・ピペンコ(Lauren Pipenco)はルーマニアにルーツを持つ自身の背景に目を向け、コンクリートジャングルに森を出現させた。ルーマニアの民間伝承と、とりわけ”森の母”を意味するムマ・パドゥリイ(Muma Pădurii)に着想を得て、守護霊でありながら恐ろしい存在として語り継がれてきた、その相反するイメージを探求している。柔らかさと硬質さを交差させたコレクションは、野性味と彫刻的な造形、想像力にあふれるものに。ショーにさらに柔らかな要素を添えるべく、デザイナーは〈UGG(アグ)〉とのコラボレーションも初めてお披露目した。
Cult Gaia
『アメリカ自然史博物館』の新館である『ギルダーセンター』でニューヨーク・ファッション・ウィークに復帰した〈Cult Gaia〉は、2027年春夏コレクション “Behesht”(ペルシャ語で天国を意味)を発表した。ペルシャ語で“天国”を意味する同コレクションは、デザイナーのジャスミン・ラリアン・ヘクマット(Jasmin Larian Hekmat)が祖母を亡くした後に抱いた悲しみと、そこから立ち直る力についての思索から着想。困難の中から生まれる美しさを探求している。チャコールトーンから空のようなブルー、咲き誇るピンクへと移ろう色彩が再生の物語を描き、建築的なバスケット織りや2,000個のリングで構成されたメタリックな構造、柔らかな手描きのオーガンジーの花びらが融合する、再生の物語が展開された。彫刻的なウッドアクセサリー、あえて作り込みすぎないヘア、陽光を浴びたようなメイクとともに、人生は最も困難な場所から花開くことを証明した。