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女性として、母として──アリシア・キーズが語る音楽を通じた代弁者でいることとは? | Interviews

「どうしてあなたは私が感じていることを言葉にできるの?」常に多くの人々の気持ちを代弁し続けてきたアリシア・キーズの真髄に迫る

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たくましく生きるひとりの女性として、そしてどんな時も胸を張って生きる母親として、デビュー以来、アリシア・キーズ(Alicia Keys)は多くの女性のストーリーを紡ぎ上げてきた。私生活では、ヒップホップ・プロデューサーのスウィズ・ビーツ(Swizz Beatz)と結婚し、パートナーとの間にふたりの男の子をもうけた母親としての顔を持つ。

今回、実に12年ぶりの来日を果たしたアリシア・キーズに、ソングライティングの秘訣から普段の生活や子供との向き合い方についてを、『Hypebae Japan』のローンチを記念して、エクスクルーシブなインタビューとして掲載する。そして、アリシアは2023年からは女性としては初めて、260年の歴史を持つフランス発の老舗コニャックブランド「Hennessy(ヘネシー)」の最高峰ラインのひとつ“ヘネシー パラディ”のパートナーに抜擢された。文字通り、ブランドの顔となり、ヘネシー・パラディの重厚さと優雅さを伝えているアリシア。両者に共通するアーティスト性にも触れながら、彼女の世界観を語ってもらった。


今を楽しんで、大きく愛して、生きてほしい。だって、与えられた時間って本当に限られているから

女性として、母として──アリシア・キーズが語る音楽を通じた代弁者でいることとは?  | Interviews

Hypebae:あなたの代表曲“Girl On Fire”は、世界中のいろいろな立場の女性にエールを送る曲として愛されています。個人的には、ママの視点から歌った“Superwoman”や“Perfect Way to Die”も大好きな曲。このように「女性へのメッセージを歌う」ということはあなたにとってどんな意味を持ちますか?

“Girl On Fire”は、最初から「特別な曲になるぞ」と感じていたんです。でも、本当に「特別だ」と実感したのは、3歳の子が全力で歌ってくれているのを見たときや、8歳や14歳くらいの子が声いっぱいに“Girl On Fire”を歌ってくれていたとき。そのときに「これは、何か大切な意味を持っている」って、心から思ったんです。それからもうひとつ覚えているのは、『Songs in A Minor』に収録した“A Woman’s Worth”のことです。私の母がこの曲を聴いた時に「どうしてあなたは、私が感じていることをこんな風に言葉にできるの?」って言ってくれたんです。なんて答えたらいいか分からなかったけど、そのときも、音楽って人の心に届くものなんだって、すごく強く感じました。だから、とても特別なことだと思っています。

今回のライブ(ALICIA KEYS – SUMMER SONIC Extra)のアンコールでは“Like You’ll Never See Me Again”を披露してくださいました。個人的な思い出ですが、当時(2017)、あの曲を聴いた時はただ「悲しい曲だな」と思ったんです。でも、そこから時が経ち、自分も歳を重ねてからあなたが歌う“Like You’ll Never See Me Again”を聴くととてもディープに響きました。全く違う響き方をして、自分でもびっくりしたんです。

“Like You’ll Never See Me Again”は、悲しい曲だと感じる人がたくさんいるんですよ。たぶん、MVの雰囲気がそう感じさせるんだと思う。でも実際は、 “今この瞬間をちゃんと生きる”ということを伝えたくて書いた曲なんです。実はこの曲、私のおばあちゃんのために作ったもの。おばあちゃんはそのとき病気で、もう長くはないってわかっていて……。でも私は、一緒に過ごす時間を持つことができて、毎日顔を見に行って、ご飯を持って行ったり、お世話をしたりできたんです。その頃はまだ(私に)子どももいなかったから、「誰かのために全身全霊で寄り添う」ということの意義深さを、そこで初めて知ったんですよね。だから、スタジオにいる時間をちゃんと切り上げて、必ずおばあちゃんと夕食を食べるようにしていました。その時に気づいたんです。「ああ、私たちって、どの瞬間も大切にしなくちゃいけないんだな」って。だからこそ、この曲の本当のメッセージは、“今を楽しんで、大きく愛して、生きてほしい。だって、与えられた時間って本当に限られているから”っていうことなんです。だから、あなたも自分の人生経験を重ねて、その本当の意味を感じ取ることができたんじゃないかしら。

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世界的なアーティストでもあり母親でもある。とても忙しい毎日だと思うのですが、辛い時や気分の浮き沈みが激しいときは、どうやってその気持ちをコントロールしていますか?

昔はずっと「人生はいつも幸せでいなきゃいけないもの」だと思っていたんです。もし幸せじゃなかったら、何かが間違っているんだって。でも、今はそうは思わない。人生って、喜びもあれば落ち込みもある。その両方でできているんですよね。人生そのものが“プロセス”であり“経験”。いつも最高じゃないし、完璧であることなんて決してない。そのことを理解してから、自分にもっとゆとりを与えられるようになりました。「今日はそういう日なんだな」って受け止められるようになったの。そして、そのときに大事なのは「なぜ、いま自分はこう感じているんだろう?」って問いかけることなんです。誰かに傷つけられたからなのか、期待していたことと違って失望したからなのか、もっと違う結果を望んでいたからなのか、それとも何かを変えなきゃいけないからなのか。そうやって「なぜこう感じるのか」を考えることで、その気持ちと向き合い、解決に近づけるようになったんです。

素晴らしいです。普段から、パートナーや息子さんたちともそうした考えを共有していますか?

私たちは、本当によく話し合う夫婦で、普段からすごくたくさん話をします。彼って本当に賢くて、そこが大好きなところでもある。私が何かに行き詰まったときに「あなたはどう思う?」と聞く。そうすると、彼から返ってくる言葉に、「なるほど!その考えはなかった」って思わされるんですよね。そして、彼も同じように彼も私に意見を求めてくれる。そうやって互いにアイディアや思いを共有し合える関係でいられるのが、本当に素敵だなと思っています。

お子さんと話すときはどうですか? どのように彼らと向き合っているのでしょう?

そうですね。息子たちがいろんなものを受け取って、そこを通り抜けようとしている姿を見ながら思うのは、「自分の意見を持ってほしい、自分の考えを育ててほしい」ということ。でも、それってすごく難しいことですよね。どうやって“自分の意見”を育てていけばいいのか……。対して、私が子どもたち過ごす中で好きなのは、自分が学んでいることや、伝えたいこと、そして「なぜそれを伝えたいのか」を話せるということ。もし息子が間違えたことをしたとしても、ただ彼を責めるんじゃなくて、理解してもらえるように話す。そして一緒に考えることで、子どもたちもちゃんと理解できるようになる。そういう時間がすごく好きなんです。それから、子どもたちを一人の人間として尊重することも大切にしています。単に親から子への一方通行じゃなくて、「あなたはどう感じているの?」と問いかけて、同時に「私はこういう理由で傷ついたんだよ」「これは私にとってこういう意味で難しいんだよ」って伝える。そうすると、ちゃんと対話が生まれて、お互いの声を聴き合えるようになるんです。私の下の子は今10歳なんですけど、その年齢でも「これはちょっとママの気持ちを傷つけたよ」って話したり、逆に子どもの方から「僕がこれが嫌だったんだ」って教えてくれたりする。そういうふうにお互いが聞き合える関係って、本当にクールだなと思うんです。

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ヘネシーが誇るコニャック、ヘネシー・パラディのパートナーとしても活動しています。ご自身のアーティスト性と希少なコニャックとの間に繋がりを感じることはありますか?

コニャックは何年もかけて熟成され、ようやく完成へと近づいていきますよね。音楽も同じで、長い時間をかけて、自分だけの特別なものを見つけていく作業だと思います。だからこそ両者はとても美しく融合するし、音楽とコニャックは見事に重なり合うと感じています。

最後に、今後についても聞かせてください。ズバリ、新作を期待できそうですか?

ちょうど制作モードに入ってる感じで、もう60%くらい出来ているの!新作がリリースされる頃には、必ず日本で特別なイベントをやりたいと思っているんです。だって、今回の来日までに10年以上も間が空いてしまっているし、「なんでこんなに時間が経っちゃったんだろう?」って思っているの。だからこそ、次作は日本の皆さんのためにスペシャルな機会を作りたいと思っています。だから、ぜひ楽しみにしていてね。

Alicia Keys(アリシア・キーズ)
ニューヨーク出身のシンガーソングライター、ピアニスト、そしてプロデューサー。2001年のデビューアルバム『Songs in A Minor』で鮮烈に登場し、グラミー賞を含む数々の音楽賞を受賞。深みのあるソウルフルな歌声とメッセージ性の強いリリックで、現代R&Bの象徴的存在として世界的な支持を集める。社会的活動にも積極的で、ジェンダー平等や教育支援、アートの力を通じたコミュニティ支援などにも取り組む。250年以上の歴史を誇るフランスの老舗コニャックブランド〈Hennessy〉の最高峰ライン“ヘネシー パラディ”のパートナーとしても知られ、ラグジュアリーとアートの架け橋となる存在でもある。

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テキスト
Writer
Shiho Watanabe
エディター
Noriaki Moriguchi/Hypebae
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